2025年度共通テスト情報Ⅰ解説
2025年度に行われた共通テストの「情報Ⅰ」の解説です。各問題の解説をしているのは、おそらくこのブログが日本最速だと思います。
なお、筆者は情報Ⅰの授業を受けたことがない(全て独学)ため、実際に使用されている教科書には出てこない単語があるかもしれません。
また、情報学の専門家でもありませんので、解説に誤りがある可能性があります。あらかじめご承知おきください。
問題文はこちらから入手できます: https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/2217520
※このブログ内では、回答の順序を問わない設問について、一律でアイウエオ順で回答しています。
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第1問
問1
a デジタル署名とは、重要なメールなどの情報と一緒に送られる署名です。デジタル署名と は元の情報をハッシュ化(特定のアルゴリズムを使って元の情報を変形すること。同じアルゴリズムと同じ情報を使えばハッシュ化の結果は毎回同じになるが、ハッシュ化の結果から元の情報を復元することはできない)したものを公開鍵暗号方式(「秘密鍵」と呼ばれるもので暗号化し、復号する(元に戻す)際は「公開鍵」というものを使用するような暗号化の方式)で暗号化したもので、情報の受信者が検証することで「情報が本人から送られていること」「情報が通信の途中で改ざんされていないこと」を確認できます。これを正しく説明した文は ②(ア) です。
他の選択肢はデジタル署名では検証できないため誤りです。
ちなみに、①は暗号化で使われる「鍵」の説明です。受信者が鍵を使用して暗号化された情報の復元に成功した場合、情報が正しく暗号化されていることを確認できますが、デジタル署名にこの機能はありません。
b 「IPアドレス」とは、インターネットに接続されたデバイスの住所のようなものであり、インターネットに直接接続された各デバイスに1つ以上割り振られています。インターネットの利用者はIPアドレスを利用して各デバイスにアクセスします。
現在世界で主流となっているIPアドレスはIPv4とIPv6の2種類があり、本文で触れられている「128ビットで構成されるIPアドレス」とはIPv6のことです。かつてはIPv4だけが主流でしたが、32ビットで構成されており、理論上では43億台のデバイスに割り振ることができるものの、インターネットの普及によってアドレスが枯渇したため、新しいIPv6が設けられました。(今の世界人口が大体80億人ほどなので、1人1台ネットに繋がるデバイスを持ったらそれだけで足りなくなりますね!)。そのため、正しい答えは ②(イ) です。
⓪①③はIPv4でも対応してます。④はIPアドレスとは関係ありません。
ちなみに、IPv6は理論上約340澗のデバイスに割り振ることができます。なんか数字が大きすぎてよくわかりませんが、これなら枯渇はしなさそうですね。
あと、詳しくは省きますが、IPv6ではセキュリティも強化されています。「セキュリティを強化するため」という選択肢がもしあったら、これも答えになってたかもしれません。
問2
各セグメントで点灯/消灯の2種類があるので、合計では2^7= 128(ウエオ) 通りあります。
また、図3をみると大文字が8種類、小文字が5種類あることがわかり、セグメントの先頭2桁で8*5=40通りが表現できます。表示したいエラーコードは合計5000種類で、数字のセグメントを1つ増やすごとに表現できる種類は10倍に増えるため、数字のセグメントを3つ、つまり計2+3= 5(カ) つのセグメントを用意すれば、8*5*10^3=40000種類(>5000種類)のエラーを表現できます。
数字のセグメントが2つの時は、4000種類となり5000種類を満たしません。
問3
数字を入力し間違えていたり、数字のデータが途中で欠損していたり改ざんされていたりしないことを確認 するために元の情報にプラスでつけられた数字の桁を「チェックディジット」といいます。生成方法Bに従って計算すると、足し合わせた値は2*3+2+6*3+0+9*3=53となり、これを10で割った余り(=R)は3なので、これを10から引くと、答えは 7(キ) となります。
クについて考えると、⓪と①は間違え方によってはどっちの方法でも検出できます(合計値が変わるため)。②は奇数桁(生成方法Bで3を乗ずる桁)が変わっているため、方法A,Bのどちらでも検出できません。残る③は、Aでは合計値がわからないため検出できないものの、Bでは3を乗ずる数と乗じない数が入れ替わっているので検出できる可能性があり、そのため答えは ③(ク) です。
問4
問題文の中で示された法則は「フィッツの法則」と呼ばれており、マウスカーソルだけでなく、物理的なボタンの配置などにも使用されています。
a 端にあるオブジェクトはマウスを勢いよく動かしても止まることができるため指し示しやすいことと、マウスカーソルの距離からを考えると ②(ケ) が正解です。
b 各メニュー項目の大きさが同じため、フィッツの法則を当てはめると、単純にマウスカーソルからの距離が遠いほど指し示しにくくなります。利用頻度を基準に考えると、より高い頻度で使用するメニュー項目はより押しやすい位置にあったほうが良いでしょう。この視点で考えると、項目5はマウスカーソルから一番離れているため利用頻度が少ないと考えられ、 ⓪(コ)、①(サ) が正解です。
第2問
A
企業全体で集めたデータを1個にまとめたシステムを「データウェアハウス」と言い、データウェアハウス内にあるデータを数学的、統計的に分析し、規則や因果関係を見つけることを「データマイニング」といいます。問題文の中ででてくる「LikeWing」は情報を本部で一括管理しているため、データウェアハウスを持っていると言えるでしょう。
問1
「時間帯ごとの総売上額(消費税込)」を比較するためには、購入時刻と「 ⑤(ア) 購入した商品の合計金額」が必要になります。他の選択肢では、総売上額を求めることができません。
「曜日別の各商品の購買の状況」を把握するためには、「購入日、曜日」の他に「 ③(イ) 商品コード, 購入商品名」と「 ④(ウ) 購入した商品の個数」が必要です。各商品の購買状況を求めたいのですから、⑥の購入した商品の個数の合計や⑤の購入した商品の合計金額は使えません(これらの項目では全ての商品の総利益や販売個数を知ることができても、個別の商品の利益や販売個数はわかりません)。
問2
「ポイント会員情報とレシートの情報を組み合わせて分析」し、「ポイント会員情報には会員の『ID』『名前』『性別』『生年』の4つが含まれている」ことを問題文より読み取る必要がある問題です。特に、ポイント会員情報に「ID」が含まれているということは、Yさんの最初の発言から気づく必要があり、少し難易度が高そうです。会員情報に含まれている「生年」より、会員の「年齢」も推測することができます。これを基に各選択肢を吟味してみると、
⓪(エ) が正しそうです。購入した理由は、ポイント会員情報やレシートの情報からは確実にはわかりません。(例えばあるお客さんがショートケーキを買ったとしても、受験合格祝いに買ったのかお誕生日だから買ったのかは確実にはわかりませんね。)
一応他の選択肢も見てみます。
①はレシートの「商品コード, 購入商品名」と会員情報の「ID」を使用すれば得られるので誤りです。
②はレシートの「商品コード, 購入商品名」と会員情報の「生年」から推測した「年齢」を使用すれば得られるので誤りです。
③はレシートの「購入時刻」と会員情報の「性別」と、「生年」から推測した「年齢」を使用すれば得られるので誤りです。
問3
(あ)(い)(う)それぞれに必要な情報を見てみましょう。
(あ)の配送情報では、LikeWing配送センターがそれぞれどの店舗にどれくらいの商品を配送するかなどを送っ ていることが推測できます。店舗を特定するためには、Ⅰ店コードが必要になりそうです。一方、お客さんに関する情報は含まれなさそうなので、Ⅱポイント会員IDは不要でしょう。
(い)では、Ⅰ店コードがないとどの店の売上・購買情報かがわからなくなってしまうのでⅠ店コードが必要そうです。「購買情報」とありますので、お客さんのデータも送られていそうです。最初の会話文に、「会員情報は本部の情報システムで一括管理している」とありましたので、各店舗はレシートのデータと会員IDだけを本部に送り、本部がデータマイニングをしていると考えるのが自然でしょう。そのため、Ⅱポイント会員IDも送られていそうです。
(う)は、問題文を見ると、お客さんがポイントカードを提示していることを表していると判断できます。手元にポイントカードがある人は見てみてほしいんですが、多分たいていのポイントカードにはバーコードがついていると思います。このバーコードに書かれている情報は「ポイント会員ID」です。店は、ポイントカードからポイント会員IDを読み取り、データとして収集します。そのため、(う)にはⅡポイント会員IDを使用します。一方、Ⅰ店コードは使用していないでしょう。(店側からみたら自分の店で買っているのは当たり前なので。)
以上のことから考えると、Ⅰ店コードを使用するのは(あ)(い)なので ③(オ) 、Ⅱポイント会員IDを使用するのは(い)(う)なので ⑤(カ) が答えとなります。
問4
それ ぞれのメリットについて考えます。
Ⅰは現在のポイントカードのポイント数を得るためにポイント会員IDとネットショッピングのアカウントが対応付けられている必要があるので、条件「あ」が必要です。一方、商品は関係なさそうなので条件「い」「う」は不要でしょう。
Ⅱはポイントカード、ネットショッピング上の商品、その商品の実店舗の在庫のすべての情報が必要なので、条件は「あ」「い」「う」全て必要そうです。
Ⅲは実店舗の商品の情報が必要なので条件「い」が必要です。また、顧客の実店舗の購買状況も把握する必要がありますので、条件「あ」も必要になります。ただ、条件「い」に関しては問題文に書かれている「商品の購入傾向が実店舗も含めて類似している他の顧客の購入履歴」を「ネットショッピングと実店舗それぞれで類似度を判断する」と解釈するか「ネットショッピングと実店舗の各商品の購買数を合計して類似度を判断する」と解釈するかによって答えが変わってきそうです。正直筆者も迷いましたが、大学入試センターが公表した回答には③が答えとありましたので、後者の解釈が正解のようです。
以上のことより判断すると、Ⅰは条件「あ」が必要なので ⓪(キ) 、Ⅱは条件「あ」「い」「う」全てが必要なので ⑥(ク) 、Ⅲは条件「あ」「い」が必要なので ③(ケ) が正解です。